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昨年の大ヒット映画「国宝」の脚本は〇〇だった!?




実写映画で2025年の超大ヒット映画と言えば「国宝」と、日本人の多くの人が答えられるだろう。


昨年6月に公開してから長くヒットし続け、久々に実写映画で社会現象と呼べるほどの影響を及ぼした映画で、今年の春までに207億円の興行収入を叩き出し、歴代実写映画ナンバーワンに輝いた。


そんな映画「国宝」の脚本は一体どんなものだったのか、個人的な目線からその大ヒットの要因を探っていきたいと思う。


まず「国宝」の特徴として一番に挙げられるのは作品尺の長さである。

174分。映画館は開始時間から予告なども流れるのを考慮すれば、少なくとも3時間は席に座っていることになる。


昨今ショート動画などが流行し、もはや長尺というだけで「そんなに集中して見てもらえるの?」と言われてしまう。最近の映画では2時間が平均的な作品尺と言われるが、それでも長いと言われ始めている。そんな中で3時間の映画。しかもテーマは歌舞伎……。


歌舞伎は日本が誇る芸能文化の一つであることは誰もが認める所だが、一般的には敷居の高いイメージがあり、特に若年層にはとっつきにくいテーマである。


こういった特徴を持つ「国宝」は、公開前にはまさか200億円を超える大ヒットを飛ばす映画になろうとは、ほとんど想像されていなかったのではないか。


ちなみに自分は公開から少し遅れた8月頃に映画館で鑑賞したのだが、映画館で一番大きいシアターが満席で、客層もまさに老若男女で鮨詰めの有様だった。終了後の反応も決して悪くないような印象だった。


映画の感想を見に行くとよく聞かれたのが、「3時間があっという間だった」という感想だった。

つまり、長尺のハードルは軽々と超えてしまっていたのである。

また歌舞伎というテーマについても、この映画がきっかけで歌舞伎の観客がかなり増えたというニュースがあった。特に若い人が増えたという。つまり二つ目のハードルの歌舞伎というテーマも、超えてしまったらしい。


こういった現象はなぜ起きたのか?ここからは筆者の目線。特に脚本についての分析をしてみたいと思う。


筆者が「国宝」を見てまず最初に感じたのが、「展開がとてもサクサク進むなぁ」という印象だった。


この映画では主人公の少年期から老年期の入口くらいまでの長い期間を描いている。そうなると当然、時間が飛び飛びになっていくのだが、それもあって停滞する時間があまりなく、次々にテンポ良く展開する。

主人公たちはあっという間に成長し、あっという間に壁にぶち当たり、あっという間に解決していく。

もちろんそこに人間ドラマが無いわけではなく、とても気持ちのいい具合の人間ドラマがそれぞれのタイミングで用意されている。

観客は次の展開、次の展開、と追って見ていくと、気づけば3時間経っているというわけである。

それは食事で例えれば魅力的なビュッフェのようなもので、いろんなジャンルの料理の美味しいところを次々取っていくと、気づいたらお盆が山盛りになっていた。というようなことに似ている。

これは脚本を読んでいても感じられる。脚本がとても読みやすい。一つ一つのシーンもあまり長くはなくてわかりやすく、セリフも同様である。これはどういう意味なんだろうと考え込んでしまうようなシーンはほとんどなかった。


ここで、ざっくりとしたあらすじくらいを見て筆者が勝手に想像していた映画「国宝」は以下のような作品である。

伝統芸能である歌舞伎の世界をストイックに、また専門的に描き、その特殊な世界の中で二人の歌舞伎役者が時に友情を育み、時にぶつかり、喧嘩になり、いがみ合い、嫉妬し合い、お互いの足を引っ張り合い、そこに女性も絡んできて、まさにコッテリした人間ドラマを3時間、まざまざと見せつけられる映画……だと勝手に思っていた。

だが実際には、上記のような要素は根底にはありそうだなと感じさせつつも、描いていることとしてはもっと軽やかで、シンプルなストーリーだった。


それでいて映像はリッチで深みのある美しいシーンが多く、また歌舞伎の舞台の描き方も、まさに舞台に立っている役者の目線での映像が多く、歌舞伎のことに詳しくない筆者のような人間にも興味深く見ることができた。

もちろん主人公の喜久雄を演じた吉沢亮、相手役の俊介を演じた横浜流星をはじめとする俳優の方々の演技もとても良くハマっていたと思う。


総合的に、これは老若男女が楽しめる作品になっているなと、改めて感じた。


この映画の脚本を書いたのは奥寺佐渡子さん。

多くの映画やドラマの脚本を描かれてきたベテランの脚本家で、筆者としては細田守監督のヒットし始めた頃のアニメ映画「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」の脚本を書かれた方である。


奥寺さんが脚本を書かれたと知った時、筆者は「なるほど!」と感じるところがあった。というのも奥寺さんのアニメ映画はとても見やすく、とても気持ちよくクライマックスが決まる印象があり、観客をうまく乗せていくのがとても上手い作家さんというイメージがあったので、だから「国宝」も見やすいのだと納得した。


そして「国宝」の監督は李相日監督である。李監督といえば、「悪人」「怒り」「流浪の月」など、重厚な人間ドラマ、特に重い犯罪を描くような作品をよく作られる監督という印象があるが、もう少し前には「フラガール」という映画も撮っていた。「フラガール」は口コミが広がってその年ヒットした映画だった。

筆者はちょうど学生の頃に見て大感動し、その経験が脚本家を目指した一つの要因でもあったりする。

「フラガール」ではフラダンスを軸に、とてもシンプルな成長と人情のストーリーが描かれている。それは「国宝」でも繋がる点がいくつもある。つまり李監督は元々得意なジャンルだったのかもしれない。


と、ここまで「国宝」の賛否の賛の方を中心に書いてきたが、ここであえて否の方も書いておこうと思う。

これは特に、同業の脚本家や監督、俳優など、映画を比較的よく見る人々から聞こえてきた意見であったのが、「葛藤の描き方が浅い」という意見である。

確かに、筆者も映画を見ていて、主人公の喜久雄と友人でライバルの俊介との間の葛藤が深まりそうなところで関係が離れてしまう。何人か出てくる女性キャラとも同じである。

葛藤が深まりそうなところでスルリと抜けてしまうように見えて、その部分を気にする人もいた。それは前半に書いたこの映画の長所ゆえの短所とも言えるかもしれない。


実写作品は平成中期に「踊る大捜査線」がヒットして以降、歴代トップを更新することは長らく出来ていなかった。一方でアニメ映画は次々にヒットが更新され、昨年は「鬼滅の刃」がついに世界中で大ヒットするようになった。

まるでそれを反映させるかのように、アニメ映画でヒットさせた奥寺さんの脚本で「国宝」がヒットしたことはとても象徴的な出来事であり、その要因として脚本の「わかりやすさ」「人間ドラマ加減のちょうど良さ」「テンポの良さ」にあることは、映画やドラマを作る我々にとって、とても示唆的なことであるように筆者としては感じてならない。

(畠山隼一)

 
 
 

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